マンション投資 失敗のデザイン
「住み心地」についてはどうでしょうか? 同じように一級建築士さんなら「住み心地」についても詳しくご存じのはず-と思いたいですよね。
しかし、建築士の試験科目は「計画」「環境・設備」「法規」「構造」「施工」 の5科目で、この中に「住み心地」 に関する「温熱環境」「空気環境」に関する項目はありません。
「住み心地」に関する知識がまったくなくても一級建築士試験には合格できてしまうのです。
だから、夏の快適さを無視した、「窓だらけの家」を設計してしまうような建築士さんが後を絶たないわけです。
「今の日本の建築技術者の中には外部の温度変化や日射の影響を受けに今まで無視されてきた「住み心地」くい快適な室内環境を守るノウハウを持つ人たちはほとんどいない」と私は考えています。
日本の住宅の基本性能を向上させるため、国土交通省は大手ハウスメーカーの研究機関と共同で「性能表示制度」をつくりあげ、スタートさせています。
しかし、鳴く物入りで制定されたこの制度で高い性能評価を得た住宅であっても、実際に生活している人の 「住み心地」 の評価はいま一つ高くない、というケースが珍し-ありません。
それは、大手ハウスメーカーが中心になって制度づくりをしてしまったために、「住み心地」を無視し、彼らが販売しにくくなるような仕様や項目の設定を見送ってしまったからなのです。
性能表示制度では10の項目で住宅を評価しますが、「住み心地」にかかわる部分の評価は一部にすぎず、そこの評価が低くても残-の9つの評価を高めれば、それで「いい住宅」 であるという評価となる仕組みになっています。
本書の第4章で詳しく説明しますが、「住み心地」を本当にいいものにするには、相応の建築コス・Lを覚悟する必要があります。
大手ハウスメーカーは性能表示に関して、販売しにくくなる「住み心地」 の向上を後回しにして、比較的わかりやすくて、しかもコストをかけずに高評価できる項目に力を入れたのです。
そのおかげで、低予算であっても、制度上だけは高い性能評価を得られる「高性能住宅」が生まれることになりました。
制度には含まれない 「サッシ」「断熱・気密の工法」「地熱利用」「排熱工事」などの大事なコストが省かれているために、上質な「住み心地」を実現できない住宅が供給され続けています。
しかし、「住み心地」向上への好転の兆しがみられることもあります。
国が推進する「長期優良住宅」 です。
①耐震性‥耐震等級2以上②省エネルギー性‥等級4 (最高ランク)③維持管理・更新の容易性‥等級3 (最高ランク)④劣化対策‥等級3 (最高ランク) を満たした建物を「長期優良住宅」として認定して普及促進する法律が施行されました。
省エネルギー性が必須になったことは「住み心地」向上のステップとして評価できますが、残念なことに、本当に上質な住み心地を実現するのに欠かせない気密性能・防露性能・地中熱利用などは考慮されませんでした。
加えて、長期優良住宅に取-組む住宅会社がまだまだ少数派であることなど、多くの課題が残されています。
建築の専門家が「住み心地」に関して、もっともっと勉強し、それを国の制度に反映することが望まれます。
今まで無視されてきた「住み心地」「住み心地」に無関心だと一生損する「人は見かけだけで判断してはいけない」とよく言いますね。
しかし、人生最大の買い物である住宅について、「家も見かけだけではわからない」と考えて判断する人がどれ-らいいるのでしょうか。
見かけだけ、わかりやすいところだけで判断しようとすると、住宅の供給者(住宅会社)側の 「より早く売って、早く安くつくって、早く回収する仕組み」に乗せられた家づくりをすることになります。
それには必ずと言っていいほど「住み心地」 の犠牲が伴い、のちのち消費者が「もっとよく考えて建築すればよかった-」と後悔することを意味しているのです。
車でいうならばボディ (車体) にあたるのが「建物の構造」 で、もっとも重要なエンジンにあたるのが「住み心地」 であるといえます。
車のボディと建物の構造は、人命の安全を優先し、構造の強度計算に基づいてつ-られています。
エンジンが老朽化して故障しがちになった車は乗り替えを考えるように、住宅も「住み心地」が悪くなったら、まだ住むことができる家であったとしても建て替えを考えることでしょう。
一定以上に豊かになった生活をしている日本人にとって、「車は動けばいい」というものではなく、住宅も「雨・露をしのげればそれでいい」というものではなくなっています。
卓は比較的容易に買い替えできますが、家は一生もの。
「住み心地」 に無関心なままで家を建てると、一生の損になります。
以下に、消費者が陥-やすい誤解や問題点を挙げてみます。
l生に一回の住宅なのに衝動買い 服を購入する時に、デザインやサイズだけを確認して購入するでしょうか。
ちゃんと試着して着心地を確認するはずです。
靴もそうです。
「履き心地」を確認するはずです。
合わない靴を履くほど、不快、不健康なことはありません。
食べ物だって、高級なものを購入する時は味見をさせてもらえます。
車を購入する時にも、販売会社に試乗させてもらって購入を決めるはずです。
見た目のデザインや機能性だけでは判断をしない、日本の消費者は、製品の品質に対する厳しさは世界一だとよく言われています。
しかし、「住宅の品質」=「住み心地」 について果たして日本人は胸を張って世界一だと言えるのでしょうか。
繊細な感覚を持ち、高品質を求める日本人が、なぜ一生に一回の、しかも人生で一番高い買い物である家については、「住み心地」を確認して購入しないのでしょうか。
大きな原因の一つには、先述したように、住宅の供給者側が自分たちに不都合な「住み心地」 に対する情報を伏せていることが挙げられます。
しかしその一方で、消費者自らが、「真に快適な住宅とは何か」「真に健康的で家族を幸せにできる住宅とは何か」「赤ちゃんから体力の衰えたお年寄-までにやさしい家とは何か」 というテーマを真剣に考えたとしたら、きっと住宅会社の 「より早く売って、早く安くうって、早く回収する仕組み」 の戦略に乗せられて、衝動買いすることはなくなるはずです。
住宅の 「住み心地」を考慮せずに家を衝動買いすることは、食品を購入する時に、見た目や味にばかりこだわって、「どんな栄養があるのか」という食品の本質を考えずに衝動買いすることと同じです。
栄養を考えずに食事を続ければ、いつか体を壊します。
同じように「住み心地」を考えずに家を建てれば、心身に深刻な影響が及ぶことにもなりかねません。
私は少なくとも、本書を手に取ってくださった骨さまには、しっかり「住み心地」を確認した上での住宅計画をしていただきたいと思っています。
そして 「住み心地」を大事にするつくり手に出会うことで、本当に心から満足できる家づくりが可能になることも知っておいていただきたいと思っています。
優先順位がしっかり決まっていない 何を優先させて 家づ-りを行うべきなのか。
これがプレてしまうと「あれもしたい、これもしたい」と無限大に夢が膨らんで、予算オーバーになります。
住宅計画には前提として、間取りや設備、デザインより先に考えておくべきことがあるのです。
もちろん、何はともあれ「予算が第一優先」という方もいることでしょう。
厳しい予算の中では「住み心地」 の悪い家でも仕方がないと判断されたのであれば、それはそれでやむを得ない選択といえます。
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